今日、何をした?

その日にしたことを書きます。

サイモン・カーティス『黄金のアデーレ 名画の帰還 』を見たぞ!

全米映画俳優組合賞、主演女優賞を受賞した『黄金のアデーレ 名画の帰還』を見たぞ!内容は美術品や、法律に関わるものだけど、それらの重苦しさを全然感じない。その代わりにナチスの残虐さという超絶重い題材を扱った映画だ!

 

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内容

第二次世界大戦時。ユダヤ人であるブロッホ=バウアー家は、芸術を愛して、多くの芸術家に寄り添いながらウィーンで暮らしていた。次女であるマリアが結婚し、その生活はまさしく純分満帆であった。だが、次第に戦争が激化していくことで徐々に幸せは綻びはじめる。時代の流れに逆らうことができず、一家もホロコーストに巻き込まれ、ナチスによる迫害を受けた。次女であるマリアは旦那と共にアメリカへ逃亡。一家の宝である数々の美術品は、ナチス将校たちにより略奪の限りを尽くされた。

その中の1点がタイトルの黄金のアデーレーー『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅰ』だ。奪われ、将校が個人的に保有していたが、戦後にオーストリア政府が運営する国営美術館に保管されることになっていた。姉の死をきっかけに、マリアはアデーレをはじめとしたかつての家族の宝を取り戻すことに決めた。自身の親戚である駆け出し弁護士のランディに協力を依頼し、オーストリアとアメリカの2つの舞台を行き来しながら、オーストリア政府を相手に裁判を繰り広げていく。

 

感想

まさしく怒涛の展開で、話が進むたびにぼくは感情をかき乱された。登場人物たちの心情を繊細に表現する役者と声優の腕前はもちろんだが、各キャラクターにしっかりとスポットライトを当てている脚本がよかったのだと思う。月並みというか、語彙力を失った表現するになるけど、各キャラクターが本当に尊かったので、それぞれに焦点を当ててみていきたい。

 

マリア関連の話

主人公の1人マリア。彼女は、誰が相手でも気丈な態度を貫くような気の強さと、ジョークをよく口にするお茶目さを併せ持っていが、ホロコーストの傷を82歳になった今でも抱えている。ウィーンに訪れたときに、ふいに当時の暮らしや、ナチスによる残虐な所業をマリアが思い出して、回想シーンで描写されるのだけど、その度に悲惨すぎて目を逸らしたい気持ちでいっぱいになった。「国家党首が決めた国の方針」に従っているから自分が正しいと思い込み、どんな行動でもとってしまう姿から、人間の本質的な悪性を見た気分になって、胸が怒りや、恐怖でむかむかした。

現代で、マリアとランディが国に返還の申請をした際にもその気持ちを感じた。法的には明らかにマリアに所有権があるにもかかわらず、オーストリア政府の人々は権力を振りかざしてそれを認めなかった。「国民の精神的支柱であるアデーレを守る」という大義名分大を盾に、一方的な態度で弱者を蔑ろにする姿は、搾取するナチスと追いやられたユダヤ人の構図となんら変わらない。まさしくそれは悪だった。

マリアについてもっと踏み込んで書きたいけど、書ききるとどうしてもネタバレしすぎるので、少しでも興味を持った人は映画を見てね!

 

ランディ関連の話

 

ランディが壁にぶつかるたびに「負けないで」と強く願った。そもそも自分の事務所を持ったが経営が立ち行かず、失敗してるランディは基本的に自分に自信がない。面接では覇気のない顔でゴニョゴニョと喋り、マリアと出会ったばかりにはうまくコミュニケーションが取れず、やり込められることも多かった。ついでに言うと、実力もない。返還を否定されてどうしようもなくなった場面で、正論を口に出していたが取り乱してしまっていた。そんな未熟者なランディに「アデーレを取り戻してほしい」という依頼が舞い込む。

「その絵に1億の価値があるから」という即物的な理由で引き受け、仕事は熱心にこなしたが、結果的に成果をあげられず、マリアは絵を手にすることなく終わった。ある程度仕方がないと諦めている部分もあったが、ホロコースト記念碑でマリアと会話することで初めて彼女(ユダヤ人)の無念を知って自身の矮小さ、不甲斐なさを悔やみ、涙を流した。その後、多くのものを犠牲にしながらも再び返還のために動き出してゆき、徐々に自信と実力をつけていく。……尊い。非常に尊い。物質的な苦難と回復、精神的な大きな挫折、再スタートがきれーーーいに描かれていた。一度は損得を優先してしまったけど、それでも感情を突き動かされて、気持ちを入れ替えてしまう。そういった人間らしさが演技や、セリフからよく分かった。大変丁寧な描写をしているのでどんな薄情な人間でも感情移入すること間違いなし。

 

その他思ったこと

・日本は敗戦後、色々な罪を認めさせられて、罰を下されたけど、戦勝国はそんなことなかったのかな。オーストリアの歴史を一切知らないけど、美術品を略奪して未だに返還しないどころか、その罪を認めすらしない姿勢を持っていたのはなぜ?史実と映画でのスタンスは異なるのだろうか。

・ランディの項目に入れると収まりが悪かったので、こっちに。奥さんがとってもかっこよかったです。仕事を辞めたランディを許し「何があっても私たちなら大丈夫」と口にできるのは強いなぁと思いました。

・実話なんだってねぇ。正義は確かにあるんだなとのっぽ、思わず涙。もっとこういう映画みたい。

・今気づいたけど、タイトルが死ぬほどネタバレな気がする!邦画のタイトルってセンス0だよな!

 

 

以上です。『悼む人』のレビューとは違って、内容に結構踏み込んでみた。最近は、個々のキャラクターから作品に興味を持つことが多いらしいし、マリアの項で書いたような考察じゃなくて、ランディの項みたいに、このキャラがとっても尊い…って書くべきなのかな。閑古鳥ブログゆえ、アクセス数の伸びから判断できないから、自分が手応えを感じられる方法を考えていきたいな。